老後破産とは? アブナイ人の特徴や回避する方法を徹底解説

投資

高齢になってから経済的に困窮する「老後破産」が増えています。

人生100年時代と言われる現在、定年退職後に20年から30年を過ごすのは一般的となりました。長い老後を経済的に安定して過ごすためには、現役時代からの計画的な準備が不可欠です。

老後破産は他人事ではありません。高齢者の貧困率は年々上昇しています。

そこで今回は、老後破産する人の特徴や具体的な対策などについて、わかりやすく解説します。

老後破産とは

老後破産とは、定年退職後の高齢期において生活資金が不足し、経済的に困窮した状態に陥ることです。高齢者の場合は新たに収入を得るのが難しいため、経済的な回復は大変困難です。

退職後に自己破産するケースは増加傾向にあります。

日本弁護士連合会が発表したデータを見ると、2020年には60歳以上の25.72%が自己破産を選択しています。約4人に1人の割合です。

老後破産の推移
引用:「2020年破産事件及び個人再生事件記録調査(日本弁護士連合会)

70歳代以上の自己破産割合9.35%も注目すべき数字と言えるでしょう。2002年の2.73%に比べると大幅に増加しています。

増加の要因は平均寿命の延伸による老後の長期化だけではありません。年金制度の給付水準調整や医療費・介護費用の自己負担額増加なども、高齢者の家計を圧迫しています。

老後破産に陥ると生活の質が著しく低下するだけでなく、精神的な負担も大きくなるので注意が必要です。築いてきた人間関係や社会とのつながりを失い、孤独感や絶望感を感じるケースも少なくありません。

老後資産の原因

老後破産の主な原因は次のとおりです。

・定年後も住宅ローンが残っている
・予期せぬ医療費用や介護費用の発生
・高齢出産
・退職後の投資失敗

それぞれ詳しく見ていきましょう。

定年後も住宅ローンが残っている

現在では40代や50代で住宅を購入するケースも珍しくありません。定年退職後も住宅ローンの返済が完了していないケースも見られます。

定年後は現役時代と比べて収入が大幅に減少するため、年金だけで住宅ローンの返済を続けるのは困難です。

月々の返済額が10万円を超える場合、年金収入だけでは生活費が足りず、結果として老後破産に陥るリスクが高まります。

予期せぬ医療費用や介護費用の発生

年齢を重ねるにつれて病気やケガのリスクは確実に高まります。保険適用外の費用が発生した場合は特に深刻です。

要介護状態になった場合の介護費用も重い負担になります。介護保険制度があるとはいえ、自己負担分や保険適用外のサービス利用料は高額になりがちです。

長期間の介護が必要になった場合は、老後資金を急速に消耗させる原因になります。

高齢出産

晩婚化の影響により高齢出産も増加しています。40代で出産した場合、子供が大学を卒業する頃には60代後半となり、定年退職の時期と教育費のピークが重なります。

高齢出産の場合は、子供の独立と同時に親の介護が必要になるケースも少なくありません。老後に経済的負担が集中するリスクも高くなります。

退職後の投資失敗

退職金で高リスクの投資商品に手を出してしまい、大きな損失を被ってしまうパターンです。詐欺的な投資話や、過度にリスクの高い金融商品に騙される高齢者は後を絶ちません。

短期間で利益を得ようとした結果、元本を大きく割り込むこともあります。老後に生活資金を失ってしまうと経済的な回復はほぼ不可能です。

老後破産する夫婦の特徴

老後破産をしてしまう夫婦には、次のような特徴があります。

・生活レベルを落とさない
・保険に入っていない
・老後の働き方を考えていない

それぞれ詳しく見ていきましょう。

生活レベルを落とさない

老後も現役時代と同じ生活レベルを維持しようとする夫婦は、破産するリスクが高くなります。

このような夫婦は「今まで頑張ってきたのだから、老後くらいは好きなことをしたい」という気持ちが強く、支出の見直しを後回しにしがちです。

定年退職直後は体力もあり活動的になりがちですが、過度な支出は後々の生活を圧迫します。

保険に入っていない

民間保険に加入していない夫婦は突発的な医療費や介護費用に対応できず、老後破産に陥るリスクが高まります。

夫婦のどちらかが要介護状態になった場合の負担も課題です。介護のために仕事を辞めれば収入は激減します。介護サービスを利用料も家計を圧迫するでしょう。

保険に入っていない夫婦は「自分たちは健康だから大丈夫」という楽観的な考えを持ちがちです。しかし、年齢とともに病気やケガのリスクは確実に高まります。

老後の働き方を考えていない

定年退職後の働き方について具体的な計画を立てていない夫婦も、老後破産のリスクが高まります。

特に下記のような場合、収入を年金だけに頼るのは危険です。

・自営業などで厚生年金がない(国民年金のみ)
・年金の受給額が少ない
・住宅ローンが老後まで残っている

貯金で生活すると考えていても実際の寿命は予測できません。想定より長生きする可能性や、インフレによる資金不足も考えられます。

老後破産の対策方法

老後破産に陥らないためにも、対策方法と注意点を確認しておきましょう。

・収入と支出のバランスを考慮する
・退職前から老後の働き方を考える
・若い頃から不動産投資をする
・リースバックの利用を検討する

それぞれ詳しく解説します。

収入と支出のバランスを考慮する

老後の現実的な収入と支出のバランスを把握したうえで、設計を考えましょう。

収入見込みは将来受け取れる年金額や退職金などから算出します。支出面では老後に必要となる費用を現実的に見積もりましょう。

〇収入見積もりの例

・年金
夫婦2人(厚生年金加入)での平均的な年金額
月額:約22万円~24万円(年間 約264万円~288万円)

・退職金
平均的な退職金(大企業・正社員)
約2,000万円前後
中小企業や非正規では数百万円~ゼロのことも

楽観的な見積もりは禁物です。年金制度の変更や雇用環境の悪化を考慮して控えめに見積もりましょう。

〇支出見積もりの例

月額(目安)
住居費13,000円
食費75,000円
水道・光熱費22,000円
保険医療費16,000円
交通通信費27,000円
娯楽教養費24,000円
その他50,000円
合計約23万円
参照:総務省「2024年 家計調査(家計収支編)調査結果」

収入が年金に限られていると余裕のある生活はできません。

なお、支出については医療費や介護費用の増加、インフレによる物価上昇などを考慮して多めに見積もると安全です。

退職前から老後の働き方を考える

退職前から段階的に働き方を変える準備をしておきましょう。

定期的に見直しを行い、必要に応じて生活スタイルや働き方の調整もしたいところです。早い段階から具体的な計画を立て、必要なスキルの習得や人脈作りを進めておきましょう。

収入が不足する場合は支出の削減だけでなく、働く期間の延長や副業も視野に入れる必要があります。

若い頃から不動産投資をする

不動産投資は老後の安定した収入源として注目される対策のひとつです。

若いうちから不動産投資を始めておけば、老後の資金づくりに活用できます。不動産は現物資産であるため、インフレに対する一定の対抗力もあります。

ただし、定年退職までの投資用不動産ローン完済は必須です。ローンを完済しておけば、家賃収入を老後の生活費に充てられます。

空室リスクや家賃下落リスクにも注意が必要です。入居者が見つからない期間が長引くと家賃収入が得られず、ローンの返済が滞る恐れがあります。

投資を始める前には、十分な知識の習得と慎重な物件選択を心がけましょう。

リースバックを検討する

リースバックとは、自宅を不動産会社に売却し賃貸契約を結ぶ仕組みです。売却後も住み慣れた家に住むことができ、まとまった現金も得られます。

住宅ローンが残っている場合は売却代金でローンを完済し、残った資金を生活費に充てられます。

リースバックを利用する際には、次のような点に注意しましょう。

・売却価格が市場価格よりも安くなる傾向がある
市場価格より10~30%程度安い価格となるケースがほとんどです。

・家賃が発生する
売却後は賃借人として毎月家賃を支払う必要があります。

・賃貸期間に制限がある
2~3年程度の定期借家契約となるのが一般的です。契約期間満了時の更新は保証されていません。

・連帯保証人を求められる可能性がある
保証人が見つからない場合は契約できないことがあります。

利用前には複数の業者から条件を聞き、慎重に検討しましょう。

まとめ

老後破産の実態は相当に深刻です。高収入であっても予期せぬ出費が原因で破産する可能性はあります。悲惨な末路を迎えないためにも、老後破産をしないための現実的な資金計画を立てておきましょう。

執筆者:鷹山慎吾

フリーライターとして金融・マネー系メディアに多数寄稿。不動産投資との出会いは、空き家問題に関心を持ったことがきっかけ。地方の再生物件や築古戸建ての活用法にも詳しく、知識をもとに、わかりやすい解説記事を発信している。

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